アカシア便り−18(岡田君の大連観光)      1995年 6月10日

 5月18日から20日の3日間,上海三越に勤めている岡田武久君が大連へ遊びに来

た。彼は日本中国青少年交流協会の遣唐使派遣・語学短期留学9回生で,私たち夫婦と

は西安市・西北大学で1か月間生活を共にした同期生の間柄である。私たちが大連にい

る間に,是非遊びにいらっしゃいと誘っていたのがやっと実現したのである。

 私たちは彼の来訪を大歓迎して学院の宿舎に1泊してもらい,夕食に引き続いて午前

2時頃まで,積もる話をゆっくり話し合うことができた。

 彼の話では,昨年7月に上海に赴任したとのこと、三越では海外店に社員を1年間派

遣して午前中は語学研修をし、午後は店頭で仕事をする毎日で夜帰るのは10時頃にな

るのが普通だとのことである。海外派遣社員として採用されるためには,会社内の採用

試験をパスする必要があり、かなりの競争率を突破しなければならないそうである。

 今回の旅行は,任期満了の帰国を1か月半後に控えて,大連の百貨店探訪も視野に入

れての旅であり結構忙しい日々を過ごすことになった。

 あらかじめ彼の希望を聞いていたので,大連市内は交通の便もよいから彼一人で十分

に探訪してもらい、開発区の訪問はこちらで車を一台用意しておいて効率よく参観がで

きるように取り計らうことにした。この日はたまたま土曜日で学院では運動会が催され

たので予定していた車が調達できず、やむを得ず工業団地開発管理会社の酒井総経理に

依頼して彼の車を使わせてもらうことになった。この車は学院の車よりハイクラスな上

に,休日でもあったので,日本語の上手な学院出身の中国人美人秘書が案内してくれて

岡田君にも大変喜ばれた。

 朝10時に車が迎えに来ることになっていたのでゆっくり食事をした後,待ち時間を

利用して学院内で写真を撮ったりしばらく散策することができた。

 車が出発すると先ず開発区を素通りして,私たちも一度は行ってみたいと思っていた

大連でも有名な行楽地・碧海山荘へ行くことにした。碧海山荘は大連湾の自然な景観を

バックに 一大遊楽園(テ−マパ−ク)を造成しており、ひろびろとした芝生はもちろ

んのこと『西遊記宮』『古典名著薈萃宮』等のテーマ館を観てまわると,自然に中国の

歴史が学習できる構成になっている。それに有名な中国の4大小説とされる『三国演義』

『孫悟空』『水滸伝』『紅楼夢』などが,物語の順を追って等身大の人形で構成されて

おり、これを若い館内の美人ガイドの発音のきれいな中国語の解説を聞きながらあらす

じを理解し楽しめるようになっている。半月ほど前,5月の国際労働節(メーデー)の

直後に,学生たちにV旅行Vというテーマで作文を書かせた時期だったこともあり、多

くの学生がその雄大な景観を賛美していたので私たちも一度は行ってみようと思ってい

たところである。もう少し中国語が聞き取れるか物語の内容を理解していれば,さらに

面白かったであろうにと3人で話し合いながら観て回った。

 午後は,開発区に戻って少し遅い昼食を食べてから,いよいよ岡田君の希望である開

発区環境巡りをした。この開発区は1984年に14の経済技術開発区の一つとして国

から指定されて以来,11年になり現在もなお開発が進められている。工業区、商業区、

教育文化区、官公庁区などに区画が決められていて,日本からもすでに多くの企業が進

出している。今年末には大連大学も教育文化区の一画に移転することが決まっており、

将来は,大連の中心地はこの開発区に取って代わられるだろうといわれているくらい広

大なものである。現在は工業区を中心に開発されており,その中にはホテルや銀行など

日常生活に必要な近代的な施設がすべて揃っているので,学生たちも卒業した後は開発

区の会社に勤めたいという希望者が多い。

 キャノン、東芝、 TDK、マブチ・モーターなどの日本企業に混じって三越精密とい

う会社の建設が進められている現場を通りかかると,岡田君は車を止めてもらってどう

いう会社なのか興味深そうに工事現場を見ていた。しかし,これはデパートの三越とは

何の関係もないことが分かって拍子抜けがしたみたいであった。買物に立ち寄ったデパー

トの中では,岡田君は急ぎ足で各階の売場を観て回り商品の陳列状況などを観察してい

た。やはり,日本のビジネスマンは個人で旅行をしていても,仕事のことから抜けきれ

ないらしい。最後は,周水子空港まで見送って名残惜しく別れた。