アカシア便り−109(井田さんの資料ー中国雑感) 2000年 4月26日   

 4月も下旬になり、最高気温が常時15度を越えるようになった。まだ、風の強い
寒い日はあるが、大連でもやっと春らしくなってきた。
 外では、今、桃の花が満開で、桜も5部咲きである。やがて、黄色い迎春花が咲き
乱れライラック(リラの花)の匂いが漂うと、春爛漫という表現がぴったりする。
 毎日見ているNHK Worldのニュースで、日本では蒙古風が吹いたため、砂あ
らしで空が黄色くなったと報じられていた。 大連での蒙古風はさらにひどく、太陽の
光りを遮って昼間から曇り空のようになる。そのすさまじさは朝の通勤に利用している
自動車が、夜中に吹いた蒙古風のせいで黄色く泥をかぶったようになっているし、その
他にも、いろいろな被害をもたらしていることが新聞に報じられている。

 最近、長兄の友人で元大和證券の機械計算部部長をしていた井田十四生さんから、
新聞の切り抜きや雑誌の抜粋が送られてくるようになり、情報が十分とはいえない中国
にあって大きな励みになっている。
 内容は、中国関連のニュース、情報(IT)関連のニュース、社会のトレンドに関する
もの等多岐にわたっている。
 中国関連では、全人大の報告記事、西部大開発、汚職事件の取締り、台湾問題等々
大連の新聞には載っていない解説記事が多い。
 毎年、3月に開かれる年に一度の全人大というのは、日本で言えば国会に相当するの
だが、ここで決められたことは、国の施策として何者にも優先する重みを持っている。
 2年前に朱鎔基首相が就任した時に3つの改革(国有企業、金融、行政)を掲げたが、
それ以外に、今年は、西部大開発、反腐敗闘争の強化、WTO加盟への準備のための
対外開放が新たな施策として加わった。どの問題を取ってみてもかなり難しいハードル
を越えなければ、達成困難なものばかりである。
 そのようななかにあって、香港の実業家が、物価の安い中国本土に密入境して愛人を
囲い、香港の本宅との二重生活を送っているというコラムがあった。今年の全人大で、
婚姻法の見直しが決まり、愛人を囲うことは、重婚につながるので罰せられるという。
香港では、この記事がトップニュースで報じられたというのも愉快である。
 IT関連では、移動電話とインターネットの記事が多い。1994年に中国に赴任し
た時は、まだ、ポケットベルが全盛のころであった。それが今や移動電話が5千6百万
台で、固定電話の5千5百万台を抜いて通信手段の主役の座に就いたという。 さらに、
来春には、次世代携帯電話サービス(現在の200倍の通信速度)が始まるので、動画
の送受信がスムーズになるとのことである。
 もう一つ、面白い記事は、『IT革命が迫る制度改革』でネット課税というのがある。
ネット取り引きには、現在、売上税がかからない。店舗を持たないネット業者は売上税を
免除されるので、小売り業者は同じ商品を売っても不利になる。一方、サーバーに課税
されることになれば、インターネットのグローバル化が進んでいるため、たとえ、売上税
を課税することになっても、香港のような軽課税国にペーパー会社を作って利益を上げる
ことが考えられる。ネット間の国際取り引きは実態を把握するのが難しく、国税局では
サイバー(電脳)税務署の活動を開始し、監視を始めた、と報じている。
 今や、店舗も商品も持たずに、PC上の商品情報と顧客情報、それに流通インフラだけ
をもって、ネット上で商売をする世の中になっている。
 自由競争の世界では、だれでもこの業界に参入できるので、そのノウハウを伝授する
サービスも立派な職業として成り立つかもしれない。

 『アイデアと実行力があればかならす成功するよ!』という声が、どこかで聞こえて
きそうである。起業家というのは、ある時期、一つの使命感に燃えて、ものに取り組む
姿勢がないと成功しない。使命感があれば、失敗してもやり直す気力が衰えず、また、
次のチャレンジに挑むことができる。
 だれでもまちがいなく持てる、この使命感。 別のいい方をすれば、ライフワークとも
言える。人によって違うが、ビジネス、スポーツ、芸術、教育、宗教、政治等に使命感を
燃やして生きている。あるいは、使命感を燃やさないまでも、ぼんやりと考えるでもなく
その分野で生きている人が多いと思う。

 わたし自身、現職のころに、一時期、使命感に燃えて仕事に取り組んだことがあった。
その時は、時間や金銭的な欲得感情が全くない状況で仕事をしていた。それがうまく行っ
ている時はそれでもよかったが、サラリーマンの悲哀というか、その努力が空回りしだ
すと、冷静に自分の行く先を考えるようになった。
 自分の能力に見合ったところにライフワークを見いだすのがよい。自分の能力を80
だとすれば、100ぐらいのところを目標にすれば、無理のない計画が立てられる。
人間は生きている限りチャレンジするものがなければならないので、目標を20%ぐら
い上に置くのがよい。そして、自分のためだけでなく、他人のため、世の中のためにな
るような目標を持つべきである。

 『アリスも驚く不思議な不思議なV日中関係Vという『新潮45(5/12号)』の
産経新聞北京支局長の記事は、中国で生活をし、中国人と一緒に仕事をしていれば、
日常茶飯事のことばかりなので同感である。『理は我にあり』と日本人が感じていても、
中国側には、ストレートには日本人の論理は通用しない。 中国に住み着いて最初の
2〜3年は、常に首をかしげながら対処しなければならないことばかりであった。
 例えば、組織(学校、会社等)の責任体制がある。組織の責任体制は、普通、階層構造
で責任者が不在の時は、権限委譲のもとに次の責任者がいなければならない。
 ところが、中国ではこの常識が全く通用しない。
 社長が海外出張などで不在であれば、社長決裁の書類は、帰って来るまで待たなけれ
ばならない。部屋の鍵を持っている図書室の担当者が風邪で休むと、その部屋は、担当
者が出勤するまで使うことができない。水道の水が道路上にあふれかえっていても、
担当者がどこかでマージャンでもしていれば、所在が見つかるまで手がつけられない。
 中国人は個人主義的な色彩が強く、日本人は組織で動く傾向が強い。
 いろいろ悩んだ末にたどりついたわたしの結論は、『日本の常識は中国の非常識、
中国の常識は世界の非常識』ということであった。これを身をもって体得してからは、
さして悩むこともなく中国の世界に溶け込むことができていると思う。
 
 もちろん、日本が多くのことを学んだ歴史の古い中国にもよい面はたくさんあるので、
プラス思考でつきあうことが必要である。

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